娘と京都へ。桜を見に行きたくなって。
初めての市比賣神社へ向かう道は、欧米の人たちがちらほら歩いているくらいで、思っていたよりも人が少なくて、心が静かにほどけていく。建物の隙間からふと桜並木が見えて。
「帰りは、あの道を通ろうね。」
そう話しながら、なんとなく、いい旅になりそうな予感がして、足取りが少し軽くなる。
市比賣神社
角を曲がると神社はそこにあり。境内はとても静かで、人もぽつぽつといるくらい。市比賣神社を少しだけ独り占めしているような気分になった。
絵馬を書いて、御神水をいただいて、ただ静かにその場にいた。
折り返して、八坂神社に向かう途中、行きがけに見えた桜の方へと足が向かう。
そこは鴨川に沿った桜並木だった。
高瀬川
右手に鴨川を眺めながら桜並木を歩いていると、左手の方に、人が集まって桜の写真を撮っている光景が見えた。桜の木の下には小さな川が流れていて、石段で降りれるようになっている。
少し冒険のような気分で、娘と一緒に浮き立ちながら降りていった。
後で知ったけれど、それは高瀬川だった。
水面には、桜の花びらが流れていて。
「ママ、花びらが流れているよ。綺麗。」と言いながら、その場に立ち止まって、ずっと見入っていた。
桜は見上げるものだと思っていたけれど、足元にも、春は流れていた。
八坂神社
八坂神社へ向かう道。
いつもとは反対側の道を選んで歩いてみた。それだけで、ちょっぴり旅気分に。
境内の中の、美御前社では、その力にあやかりたいと、娘が御神水をぱちゃぱちゃと顔に浴びせていたら、すれ違った外国の方が微笑みながら、「good!」と言ってくれて。娘もはにかみながら「thankyou」と。そのやりとりが何だか少し温かいなと思った。
円山公園
そのまま、お隣の円山公園へ。
枝垂れ桜が見事で、「あぁ、今年も来て良かったな。」と思う。
見上げた先にに広がる桜は、どこか現実じゃないみたいで。桜の精霊は本当はいるんじゃないかなと思うくらい、やさしい空気が流れていた。
鴨川
そして最後に、また鴨川へ。
こちらはまだ蕾の桜並木の中で、一本だけがひときわ咲き誇っていた。
そのまわりに人が集まり、それぞれに写真におさめている。満開じゃなくても、そこにあるだけで、人は立ち止まるんだなと思い。
娘は少し離れたところで、川面にある花びらの吹き溜まりを見つめていた。風に流されて、集まった花びらたち。
「きれいだね」と言いながら、しばらくその場を離れなかった。
家に帰ってから、ふと思い出して手に取ったのが、森鴎外の高瀬舟だった。
久しぶりに読みながら、あの川の流れと、花びらのことを思い出していた。
そんな、誰かと見た景色は、いつまでも心に残るものかもしれないなと思う。
曇り空の京都は、静けさが少しだけ濃くて、やっぱり素敵だった。
ミルク珈琲を飲みながら、そんなことをゆっくり思っていた。